住宅ローンを返すために働き続けるのは幸せか?

「若い時から保険のこととか、お金のことをしっかり考えていたら今頃1,000~2,000万円くらい簡単に貯まっていたんだろうな。」

この言葉は60歳を過ぎた父から言われた言葉です。

父は、形式上は定年をして、現役時より給与が減った状態で働き続けて65歳で完全退職しました。
一方で母も、老後のためと60歳を過ぎてもパートを続けていました。

父は新潟に本社がある会社のサラリーマンで、母もずっとパート勤務でしたので、いわゆる新潟の平均的な家庭です。

細かい家計状況は分かりませんが、「住宅ローンは退職金で何とか完済をしたけれど老後の蓄えが少ないので、可能な限り働こうと思っている。」話を聞く限り、なんとなくこんな感じだと思います。

60歳を超えてくると、自分の思った以上の体が言うことを聞かなくなってきているようで65歳まで働き続けるという誰もが当たり前のように考えているストーリーは、誰もが絶対にできることではないということを実感しました。

60~65歳の労働について

父の細かい家計は知らないので感覚でしかないのですが、65歳まで働くことができればその貯蓄が老後資金になり、そこまで贅沢はできなくても普通には暮らしていける・・・という結果になるんだと思います。

おそらくこれは私は両親が20代半ばの時の子どもなので、教育費の支出が割と早期に終わったことと、住宅ローンをそんなに多く組んでいなかったことが、最大の要因だと思っています。

私の実家は新潟市の郊外にあり、両親の実家はそれぞれ中央区でありながら郊外を選択していました。全く縁もゆかりのない土地を買ってそこに土地を買ったということは、価格重視だったのではないかと思います。東区の団地に引っ越す前に住んでいた時に、「空気が悪い」ということを良く行っていたので、空気がきれいな郊外を希望して土地を選んだのではないかという想像もつきます。

子どもが独立する年齢が若いことと、家(土地)にそこまでお金をかけなかったことで、60歳~65歳までの労働は、必須ではないがしたほうがいいという一応選べる状態ではあったのではないかと思います。

家計分析をするときっとこのような状態になっているのだと思います。

実際、新潟の平均的な家庭でライフプランを作ると、若くして子どもが独立してなおかつ住宅ローン金額に無理がなければ、うまくやれば60歳リタイヤできる。もしくは60歳以降は今の仕事を辞めて、アルバイト程度の仕事をやっても収支が成り立つ場合があります。

しかし、、一方では...

65歳まで労働しないと破たん

私は仕事柄これまでに1,000件以上の家計を見てきました。

この時に半分以上が住宅ローンを組んだ場合、夫が65歳まで働かないと破たん、つまりの勤務は必須。
このような現実になっています。

今の時代は65歳まで働くのが当たり前のような空気ですよね。
これらの大前提は、晩婚化または不動産価格の高騰に対して、年収増加が釣り合わず65歳まで働くしかないというのが実際のところです。
65歳まで働けるかどうかは、本当に両親を見ていても体次第かと思います。

健康であることが大前提ですが、自分にはコントロールできない体調面に支障がでたときに、現実的に働き続けることはできません。
つまり健康面が大きく崩れてしまった時には、一気に家計崩壊の引き金になってしまうということです。

最近は資産運用が流行っているわけですが、投資効率がいいのは株ではなく自分自身の体であることは言うまでもありません。
特に最近はメンタル疾患が目立ちますので、無理をしないで休める時に休むことの大事さをとにかく実感します。

保険は一時的なものでしかない

保険に入っているといっても、保険で出る金額は、あくまでも一時的なものであり、住宅ローンはたちまち払えなくなってしまいます。

最近は病気になるとローンが減額されたりなくなるという住宅ローンも増えてきました。
住宅ローンが完全にゼロとなる要因は、思ったより条件がきつく、早々簡単にうまくいくものではありません。
住宅ローンにセットされている働けなくなったときの保険は適用のハードルが相当に高くほとんどあてにできないというのが現実なところです。

なので一言で言うと、保険は医療費の実費くらいは出ますが、その後の生活を支えるものまではあまりあてにならないということです。
基本的には復職前提で収入を復活し再び住宅ローンを支払っていくのが本線であり、療養期間中の生活原資を保険でカバーしていくという考え方のほうが現実的と言えます。

住宅ローンにセットされる保険(団体信用生命保険)も約款を読み込むと、そのような保険商品で構成されていることがほとんです。

リスクを見ればきりがないが・・・

あまり悲観的なことばかり考えても仕方がありませんが、

「じゃあ昆さん、安全を見て夫婦ともに60歳までの勤務のシミュレーションで作ってみてください。」

となったときに、半分以上の方が「希望する額での住宅購入は厳しいです」という結果になってしまうように思います。
住宅取得年齢が上がっていて、不動産価格も高騰し年収がそれも追いついていない現状では、60歳リタイヤはほぼ不可能です。

65歳までの勤務が大前提でようやくややプラス収支、場合によっては70歳までの勤務が必須なんていう結果が最近は目出すようになってきました。ここは国も理解していて、公務員の定年延長は既定路線ですし、民間企業にもドンドンそれが広がってきていますよね。

できればそんなに働きたいないのがきっと多くの方の本音かと思います。
しかし生活を成り立たせるためには、働き続けるしかないというのがこの国の実情のようです。

ここであなたはこんなふうにも思いませんか?
「そこまでして家を手に入れるメリットはあるのか?」ということです。

自分自身が65、70歳まで働き続けれるかどうかのリスクを抱えながら、いざとなってもローンがなくなるほどの保険適用もされるハードルも高く...となると、自分たちに見合っていない住宅ローンを借り入れる事のリスクは過小に扱われすぎていると思いませんか?

特に危険なパターンなのが、40歳前後の方の住宅購入で、このタイミングだと年収もそこそこ上がってきているために生活レベルが高くなってきています。住宅ローンが多少高くても、月々の収支でみれば払っていけるために、不動産購入価格も比例して高くなりがちなのです。

しかし、住宅ローンは30年・35年ローンで組む場合がほとんどです。
60歳以降は仮に雇用延長されたとしても収入減少はほぼ確実かと思います。
そもそも60歳以降も働き続けることが可能かどうかの判断をやはり甘く見すぎてしまう傾向にあります。

つまり今は余裕でも住宅ローン返済期間中の半分くらいは、かなり返済が辛くなることが予想されることが分かります。
退職金で一括で返せばいいとお考えの方も多いですが、そこで老後の貯蓄をすべて吐き出してしまうとその後の生活が成り立たたないケースも多く見られます。

今は大丈夫だとしても中期・長期的な視点で見たときに、住宅購入をしたばかりにどんなことがあっても働くことが必須という状態はできれば避けたい。あなたはこのように思いませんか?

住宅購入時に、今現時点のものではなくて、中・長期的な視点であなたの身の丈に合っているかをぜひ考えてみる事をおすすめします。

PS

「若い時から保険のこととか、お金のことをしっかり考えていたら今頃1,000~2,000万円くらい簡単に貯まっていたんだろうな。」

冒頭に両親が言っていたこの言葉は本当にその通りです。しかし、定年時に気付いても遅いのです。
あなたが少しでも早くお金のことをしっかり考えていれば老後に残るお金は1,000万円以上変わることは決して不可能ではありません。

「家を建てる前にお金の事をしっかり考えたい」このようにもしあなたが思ったらマイホーム予算診断サービスを行ってください。
これにより中・長期に渡りいくらまでの住宅購入金額が妥当なのかが分かります。
今のところマネーリテラシー(お金の知識・能力)の高い人は、厳しい社会を生き抜くうえで突出して優位性があるのです。
工夫したいで人生の質を大きく変えられるのです。その一歩は、まずは自分自身の家計としっかりと向き合うことです。

また、無料メール講座では1,000万円支払うお金が変わるという考え方についても書いています。
興味のある方は、ぜひ読んでみてください。

昆 知宏
新潟住まいのお金相談室代表。新潟の住宅会社の営業マンとして働いた後、売り手の立場ではなく買い手の立場に立って住宅購入の相談ができる場所を作る為に独立した。

保険や住宅を売ることを目的にしない住宅購入専門のファイナンシャルプランナーとして、100%顧客サイドで顧客の理想とする家を安心・納得して買えるようにアドバイスを行う。そのスタイルが支持され、新潟県全域から年間100件以上の相談依頼を受けている。

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