史上最低水準の低さから、微動だにしない住宅ローン変動金利。一方、じわじわと上がる固定金利。
変動金利と固定金利の長い均衡が動き始めました。
2022年6月から、第四北越銀行も『15年固定』と『20年固定』の住宅ローン金利が0.1%上がります。
10年固定金利は引き続きそのまま。それでも、第四北越銀行の期間固定金利が上がったのは数年ぶり。
世の中の状況が刻々と動いていることを実感します。
固定金利の代名詞でもあるフラット35は、6月は1.49%(前月比+0.01%)。
ついに1.5%代目前となってきています。(長期優良住宅や省エネ住宅の金利引き下げにより、当初5~10年間は割引有)
一方で、変動金利は相変わらずそのままです。
第四北越銀行の変動金利は0.725%。
ネット銀行では0.3%~0.4%代がスタンダード。これはここ数年変わりません。
この金利差が、ある動きを引き起こすようになってきました。
固定金利は変動金利の2倍!?
新潟で家を建てる方にスタンダードに選ばれやすい、新潟の地方銀行水準で話をします。(2022年6月基準)
新潟の住宅ローン金利相場は、変動金利0.725%。
全国一律のフラット35固定金利は、1.49%(当初10年間は省エネ住宅等で1.24%)
変動金利 0.725× 2倍=1.45%。
つまり、今月のフラット35固定金利は変動金利の倍である1.45%以上!
心理的節目である『固定金利が変動金利の2倍』を超えてしまいました。そのため、固定金利を敬遠される方が目立ってきました。
2倍が心理的節目と言われるのは、私も理解できます。
例えば、3,000万円を借りた場合に1年目にかかる利息。
金利の利息を計算をすると…
1年目に払う利息
変動金利 3,000万円×0.725%=217,500円
固定金利 3,000万円×1.49%=447,000円
ローンにかかる利息は、シンプルに『借入残高×利率』です。利息が倍になれば、支払く利息も倍となります。
しかし実際はもう少し固定金利の金利も下がります。フラット35は省エネ住宅などで、最初10年間は金利の0.25%割引がされます。その割引にほとんどの人が当てはまるからです。
もう一度それで計算してみましょう。
変動金利 3,000万円×0.725%=217,500円
固定金利 3,000万円×1.24=372,000円 ※当初10年間の割引を適用
これでも、年間で支払う利息が約15万円も違いますね。
この金額差では「途中で金利が上がらないに賭ける!」と変動金利で勝負をかける人が増えるのも理解できますよね。
変動金利を選択するリスクも
この利息差。目先の情報だけを頼りに住宅ローンを選択するなら、変動金利に目が行くのは当然です。
将来の金利は誰にも分からず不確定。今の事実だけで決めるとなれば、変動金利が魅力的に見えるからです。
もう少し詳しいシミュレーションを見ていきましょう。
3,000万円を35年返済したときに、10年間で支払うことになる利息です。
・変動金利 189万円 ※0.725%が今後10年間変わらない場合
・固定金利 328万円 ※フラット35の金利優遇期間1.24%の10年支払利息
その差は、135万円。
この価格差は、変動金利を選択して今後10年間金利が上がらなかった。つまり「勝負に勝った場合」です。
10年間で変動金利0.725%と固定金利1.24%を比較した場合。変動を選んで得られる最大限の利益が135万円になります。
この利益を狙うために、あなたはリスクをとるかどうかを決めることになります。
変動と固定の金利差≒保険料のようなもの
上記は、最大限の利益が出た場合の話。もちろん変動金利には、途中で金利が大きく上昇する可能性があります。
金利が大きく上がると、あなたが変動を選択した場合「負け」となる可能性が高くなります。
一方で固定金利を選択した場合。
金利が上がらなかったら、変動金利を組んだ人に対して135万円多く利息を払うことになります。
でもその135万円を支払うことで、「大きく金利が上がるかもしれない。」という将来の不安が解決されます。
つまり変動金利と固定金利の差額は金利上昇リスクに対しての保険。その保険料がこの場合は、135万円ということです。
これを高いと見るか、安いと見るか。
答え合わせは数年後になります。
今後金利が急騰した場合は、「135万円はとても安い保険料だったね」となるかもしれません。
正解が誰にも分からないこと。そのため結局どの専門家の意見も、競馬の予想と同じような域になってしまうのが否めません。
正解がもし分かれば、金利選択で頭を悩ます必要もありませんからね。あなた以外の専門家も、分からないからそうなってしまうんです。
変動金利を組む方へおススメの家計管理法
3,000万円 35年返済時、「地方銀行の変動金利」と「固定金利のフラット35」の利息差が10年で135万円。(但し金利変動がなかった場合)
ここまでこの話をしてきました。
利益差の135万円。これは固定金利を選んだ人にとって、金利が上がった時に防御できる保険料という話をしました。
固定金利派の人は、それで金利上昇のリスクをシャットアウト。影響を家計に持ち込まないのでそれで大丈夫です。
もう将来金利がどうなろうと、家計にはノーリスクで関係ない話です。
では、変動金利を選んだ人が金利上昇が起こった時にどう防衛・管理すれば良いのか。
ひとつおススメの方法があります。
防衛貯金で金利上昇に備える
変動金利を組む場合
固定金利のシミュレーションも必ず確認し、固定金利で組んだつもりで差額を貯金することです。
変動金利を選んだ人は、固定金利を組んだ人よりも毎月の返済額に最初は余裕が出てきます。
その差額をしっかりと貯め、金利が上がった時に対処できるようにしておきましょう。
例えば、毎月1万円を金利上昇時に備えて貯金します。
10年間で120万円にもなります。
固定金利を初めから選択していれば、利息(≒保険料)として消えていたお金です。
変動金利を選択した方は、金利に保険をかけなかったので保険料相当は手元に家計上は残っているはずです。
このお金を元手にして防衛貯金をする。
すると、金利上昇時に
繰り上げ返済をするのか、毎月支払いが増えてしまった分に補填するのか。対策を打つことが出来ます。
金利上昇しても数年間対策できる防衛貯金があれば、その間にまた金利が下がるかもしれません。
さらに上がってしまったら?
この場合は「金利の予想を外したのだから仕方ない。」そう割り切って頑張って返すほかありません。
家計管理できない人は固定金利がおススメ
目先に安さで選ばれやすい変動金利は、家計管理の上級者編のローンとも言えます。
求められるのは管理力。
家計管理に自信がない場合。
ローンを組んだ後に金利のことは二度と気にしなくてもよい、固定金利を選択すれば良いでしょう。
変動金利を選択するなら、固定金利のシミュレーションも作ってみて差額をしっかり管理し貯金を実行!
最低限この貯金をしておけば、金利上昇時にリスクを少し緩和できるし次の一手を取るまでの時間も作れます。
PS
変動金利は、目先の安さで選ばれやすいです。しかし、家計管理がしっかりできない人には危険。
本来変動金利は、金利が上がった時に打つ手をもっているような余裕がある人ほど向いているローンです。
しかし家計に余裕がない人。少しでも毎月の返済額を抑えたくて変動金利を選んでいる人が後を絶ちません。
変動金利だと何とか行けそうだけど、固定金利の場合の毎月の返済額だツライかも...。ということであれば、変動金利は間違いなくあなたの家計に適したローンではありません。そもそもの予算に問題がありそうです。
マイホーム予算診断サービスでは、シミュレーションは固定金利で見ます。
その上でリスクを取れそうな家計であったり、戦略的なローン返済が実現できそうであれば変動金利も検討する。これが本来の健全な家計の姿と考えます。
保険や住宅を売ることを目的にしない住宅購入専門のファイナンシャルプランナーとして、100%顧客サイドで顧客の理想とする家を安心・納得して買えるようにアドバイスを行う。そのスタイルが支持され、新潟県全域から年間100件以上の相談依頼を受けている。