「月々返済額、やすっ!」
妻の実家で新聞折り込みのチラシを見ていた時のことです。
連休期間だったのでスーパーの美味しそうな写真がたくさん載っているチラシが多い中、住宅のチラシが入っていました。
建売住宅の見学販売会を実施しているようで、「土地+建物」の価格が書いてあります。
そこには、『土地+建物の本体価格2,580万円』との表記。
価格的には新潟の郊外と一緒くらいの感じです。
いたって普通の建売住宅ですが、性能がちょっと低そうな感じでした。
「この仕様で寒くないのなあー、いや、絶対寒いよねコレ。」
と、思ってしまいます。(しかも妻の実家は東北です)
新潟以上に過酷な環境の東北で目先の安さだけで買ってしまうのは何だかなあと・・という気持ちになりました。
まあ、それは置いておいて、それよりもこのチラシには、気になるところがありました。
夢のマイホームを入手できるかも!
2,580万円の土地建物って毎月いくらくらいの返済になるのか?
2,580万円と言われてもイメージがあまりできませんが、月々返済額の表記であれば分かりやすくなりますよね。
もちろんこの価格が低ければ、低いほど買う側にとっては魅力を感じますよね。
当然売り手としては低く見せたいところです。
このチラシでは月々返済額62,805円~(ボーナス返済なし!)と、表記していました。
「むむ!?」
土地付き一戸建てで、(しかもかなりの一等地)家賃と変わらないではないか!?
と思ってもらえればこの広告は成功でしょう。
62,805円なら今の家賃とあまり変わらないのに、一等地に一戸建てが持てるなんて「夢のよう・・・夢のよう・・・ああ、夢の一戸建て・・・」と思っていて実際に見に行ったらさらに、「今日決めてくれたら端数の80万円もお引きします。」なんて言われたら、元々狙っていた立地であれば買おうかなと思う人も一定数はいるのではないかと思います。
しかしチラシの細かい字をよく読んでいくとこれは、誤解を招く表記が多いことが分かります。
売ってしまえばあとは関係ないと言われればそこまでですが、「それは、ちょっとなあ」という内容です。
月々の返済額トリック
この広告は、決してウソをついているわけではありません。
月々62,805円~は事実です。
しかし、勘の良い方はもうお気づきでしょう。
『~(から)』という表記を見逃してはなりません。
実はこの62,805円は、
・40年返済
・3年固定
という住宅ローンで計算されていました。
ツッコミどころ満載すぎて、分かる人が見れば逆に笑えるレベルです。
40年返済の住宅ローンは新潟でも可能ですが、40年の返済計画をあなたはどう思いますか?
魅力を感じますでしょうか?
あなたが今30歳と若くても、40年後は70歳。
40歳だったら80歳です...。
それだけの長い年数で返していけば、月々の返済額は低くなるのは当然です。
もう一点。
3年固定というローン。
住宅ローンは、「3年、5年、10年、20年、35年固定等」細かく固定商品があるのですが、約束された固定期間が短いほど最初の金利が安くなるのです。
そして、固定期間終了後は、グッと返済金利が高くなる仕組みなのです。
この広告は3年固定という一番金利が低いローンで借りて買った場合ですから、4年後確実に返済額は上がります。
月々62,805円は、一瞬の幻なのです。
しかも住宅ローンは、今よりも増えた額で40年から3年引いた、37年間も続きます。
2,580万円を35年返済で固定金利で借りつと2021年6月の金利だと、返済は月々77,113円。
確実に計算できる額がこの77,113円だとすると、チラシに書いてあった金額とは月々約15,000円もの返済額の差になりますよね。
つまり買っても大丈夫かどうかの目安はチラシに書いてある返済シミュレーションではなくて、固定金利の返済額を計算してみて心理的に負担を感じないかどうかがまだ大事になります。
65歳超過ローンは非現実的
そもそも私は40年ローンは、非現実的だと思います。
35歳で買って完済が75歳なんて、どうでしょうか?
一生、住宅ローンと一緒に過ごしているような感覚さえ覚えてしまいます。
しかも不幸なことに、チラシの家は性能的に40年持つのか微妙な家です。
途中で大規模修繕が必要となってくるのは明確で、トータルコストは結局高くつきそうな気配がプンプンします。
しかも提案通りの住宅ローンで買えば、かなり多くの利息を支払うことになりそうです。
多くの企業では55歳で昇給停止し60歳からは大きく収入が下がる中、完済が65歳を大きく越えるローンを組むのはハッキリ言って無謀です。
住宅ローンを借り入れた当初に完済予定年齢が65歳を過ぎる場合は、
・残高シミュレーションをして、退職金(60歳)で一括返済可能。
・途中でコツコツ繰り上げ返済可能で実際は60歳程度で終われそう。
・収入が上昇一途で余裕がある(今のご時世でなかなかあり得ませんが)
これならまだ大丈夫ですが、そうではない場合は、考えを改めたほうが得策と言えるでしょう。
今の家賃と、住宅ローンの額は似ていて非なるもの。
それは、固定資産税、火災保険料、住宅修繕費用と言った家賃にはない支出があるからです。
住宅だけは衝動買いしないよう、あなたも気を付けてくださいね。
PS
とにかく安く見せたいと思っている業者のチラシは、このように月々返済額を安く見せるテクニックを駆使します。
最近ではネット銀行の低金利を入れるところも多いですよね。
それは確かに嘘ではないのですが、その返済額がずっと続く保証はありません。
特に誰が使うんだろう?という「3年固定」などのシミュレーションを入れている場合は、とにかく安く見せたいことが明確ですよね。
住宅ローンは目先の金額の大小ではなく、長期的に見て最後まで支払うことができるかどうかの目線が大事です。
マイホーム予算診断サービスでは、客観的にあなたの無理のない借入金額を算出します。
私は家を売る立場ではありませんので、結果はシビアになってしまうこともありますが、その上で、「ではどうやったら家を買っても大丈夫なのか?」を確認することが大事だと思っています。
保険や住宅を売ることを目的にしない住宅購入専門のファイナンシャルプランナーとして、100%顧客サイドで顧客の理想とする家を安心・納得して買えるようにアドバイスを行う。そのスタイルが支持され、新潟県全域から年間100件以上の相談依頼を受けている。