持ち家所有のメリットとデメリットを考える

まだまだ家の価格高騰が止まりません。
ここまで高くなると、家を買うことに躊躇してしまいますよね。そこで、今まで以上に悩むテーマがあります。

それはマイホームを所有するのか。それとも賃貸のままで暮らすのか。

今より快適な暮らしを実現させたいとなれば、所有に軍配が上がります。

断熱性や家の広さ、音の問題では、一戸建てが圧倒的に優位かと思います。

一方で、所有することにはデメリットも当然ながら存在します。
一般的によく言われている所有するメリットとデメリットについて、ひとつひとつ細かく見ていきたいと思います。

マイホームを所有する一般的な5つのメリット

まずは所有をするメリットからです。

私個人的には所有してのメリットとしては、やはりローンがなくなれば自分の所有物になること。
いずれ住居費の大きな固定支出がなくなり、自分の好きなようにできること。

音の問題を気にしなくても良い点は、子育て中の今、存分に恩恵を感じてきました。
大声で走り回り、switchをしててもジャンプで汗だく…。
賃貸の集合住宅では、間違いなく防音問題にピリピリして過ごしていたでしょう。

その他、一般的な経済的メリットも挙げられます。真偽とあわせて見ていきましょう。

メリット1:資産になる

まず1つ目のメリットは、家は資産になるということが言われています。
本当にそうでしょうか?

この答えは、「購入した不動産次第」というのが本当のところでしょう。

資産になるということ、具体的にどういうことを指すかと思いますか?
資産と呼べるかは、売ろうと思った時に自分の想定通りの金額・タイミングで売れるかどうかです。

建物の価値は数十年後には大きく減価します。そのため「資産=土地>建物」と考えて良いかと思います。
つまり、将来的に子どもに資産として不動産を残したいなら、多少高くても万人受けする土地を買うことが重要になります。

一方で途中で売るつもりがなくて、永住前提の方の場合は話は変わります。

子どもたちに資産を残すよりも、自分たちのライフプランを重視するいうことであればそれほど資産価値を意識する必要はないでしょう。万人受けしなくとも、価格とあなたの利便性が折り合う土地を選ぶことができます。

住宅購入を資産としてとらえるのかそこまで考えなくてもいいのかは、売却前提か永住前提かで決めましょう。

家を資産にしなくても良いと考えれば、割り切ってコストダウンし家計にやさしい家を建てることも可能です。

メリット2.ローン返済後は老後の生活コストが下がる

2つめのメリットは老後の住居費。住宅ローンを払いきってしまれば、老後の住宅コストが下がります。その分生活に余裕が持てるという考え方です。私もその通りだと思います。

資金計画が計画的であれば、老後まで待たずとも40代、50代でローン完済も非現実的ではありません。

もしそうなれば、家計は相当に楽になります。

もちろん住宅を所有すれば、建物を維持するメンテナンスコストは発生します。
しかしそのコストは事前に想定が付くものですし、自分である程度はコントロールも可能です。
家は価格は高くなったものの、比例して物も良くなっています。以前に比べ、メンテナンスコストは抑えようと思えば抑えることもできます。

しっかりとした家を作れば、50年は安心して住み続けれられることができるのです。

一方、賃貸には最大のリスクがあります。それは高齢時に住めるところがなくなる、もしくは住居の選択肢が狭まることです。

所有の場合は、自分の持ち物ですから当然問題ありません。終の棲家として安心して住まいは確保ができます。
住宅ローンを完済さえしてしまえば、持ち家は家計上は最強。という考え方は合っているでしょう。

ただ注意が必要なのは、住宅ローンが重すぎる場合。ローンの支払いが重く貯金を残せず、そもそも老後の生活が立ち行かなくなることです。
あくまでも住宅ローンを確実に返済できることが大前提です。

メリット3:建て替えやリフォームが好きにできる

住宅を持てば、当然ながら自分の好きなようにできます。

とはいえ、短期的に何度も自分の趣味に合ったリフォームをしたりする人はあまり見ません。どちらかというとこの考え方はもっと先の長期の視点のメリットだと考えられます。

例えば、2世帯住宅への建て替え。土地を所有していて、将来的に子どもが2世帯住宅を望んだ場合。初期コストを抑えて建て替えやリフォームの計画実現ができます。

相談室にいらっしゃる方でもこのような事例は少なくありません。

そのためには建築資金が必要にはなります。けれど、土地の取得コストがない分、子世帯の負担額が減ることに。2世帯住宅に建て替えもリフォームするにも、金銭的なハードルが大きく下がります。

土地は自分の所有物だから、何をしようが自分たちの思い通りにできますよということですね。
ただし注意が必要なのは、建て替えのタイミング。好きなように建て替えができるのはあくまでも最初に借りた住宅ローンが完済したあとです。住宅ローンが残っている家を、銀行に無断で壊すことは当然ながらできません。

4.住宅ローン減税が受けられる

続いては、分かりやすい金銭面のメリットです。
それは住宅ローン減税。2023年のルールだと、新築の場合借入額の0.7%分を上限に13年間税金のキャッシュバックを受けられます。

分かりやすいイメージでお話すると「13年間は住宅ローンにかかる利息分を、国が面倒見てあげますよ」という感じです。

例えば第四北越銀行の変動金利は0.725%。
ここから0.7%の事実上キャッシュバックがあればどうでしょう。金利変動がない前提であれば、0.025%という無利子同然の金利で当初13年間は借りられることと等しくなります。

賃貸のままである場合は、国からの家賃支援のようなものは現在のところありません。

しかし銀行で不動産を買うためにローンを借りると話は別。13年間は0.7%分、国から事実上の利息補助を受けられます。
借入額と年収にもよりますが、平均的なローン金額や年収で試算しても事実上のキャッシュバック額は数百万円にも。

賃貸と所有を比較すれば、その差は歴然。「家を買うだけでこんなに税金還付を受けられるのはズルい!」と言われるくらいのメリットがあるとも考えられますよね。

5.ストレスが減る

金銭面でも上記のようなメリットがありましたが、個人的にはストレスが軽減できる点にあると思います。

近年の異常な暑さも、新潟の厳しい寒さも高性能の家を建てれば少ない光熱費で年中快適に過ごすことができます。
これに勝るものはありません。

また、賃貸よりも広くて自分の好きな雰囲気に囲まれたスペースに住むことができます。

大きなLDKや料理がしやすいキッチン、広いお風呂、広々した収納充実の玄関、建具の1枚から好みの内観・外観の住まいは賃貸ではなかなか難しいことです。

賃貸でも不可能ではありませんが、家賃が高くなりすぎてしまいます。

子どもの声や音も一戸建てであれば、近所迷惑にもなりません。

誰かからクレームを付けられる不安がなくなるというのは、ストレス軽減になりますよね。

マイホームを所有する4つのデメリット

一方で住宅購入のデメリットはなんでしょうか。

私自身は、これまでに家を建てたデメリットをあまり感じてきたことがありません。ですが、それは単にこれから挙げるデメリットに該当しなかっただけかもしれません。

あなたも該当しなさそうであれば、持ち家のメリットが多いと思います。該当項目があればちょっと考えた方が良いかもしれません。4つ挙げるので、見てみましょう。

デメリット1:自由の利かなさ

35年の住宅ローンを組んで土地を買って家を建てる。そうすると、住まいは快適であっても物理的な自由はなくなります。

例えば、転勤。簡単には引っ越しができなくなってしまいます。

『家を買うと転勤になるの法則』というがありますよね。私が住宅営業をしていた時も、独立してからの相談者さんからも、決してない話ではありません。

転勤で転居が必要になった時どうなるか。

例えば、ローンが残っているのに家を手放す場合。売却しても往復手数料分と建物の価値が下がった分がマイナスになることがほとんどです。売却することが有利になることはあまりありません。
そうなると一家で転勤というよりは、単身赴任が現実的かと思います。期間が限定であればまだ良いですが、見通しがつかないと困りますよね。

さらに最近は、転職も目立ちます。転勤というよりも働き方の変化、価値観の変化によって転職希望される方が急増しています。

このケースでは、転職しても住宅ローン返済は既に始まっていることになります。転職先では、まずは生活を成り立たせるための最低年収をクリアする必要が出てきます。やりがいよりもお金を優先する必要が出てくるかもということです。

家は簡単に売れないし、売却損がでます。金銭的な負担を考えると、持ち家は生活面において自由は大きく損なわれます。就業プランが固まっていない方。特に若い方の場合は、住宅購入が自由を狭めることにならないように注意が必要です。

デメリット2:住宅ローンの返済額は途中で変更できない

家を買って住宅ローン返済が始まれば、毎月の住宅コストが固定されます。住宅価格の高騰も相まっておそらくほとんどの方が、賃貸時よりも大きく上がる毎月のコストに最初は戸惑うはずです。

それでも家計がプラスに推移できれば問題ありません。ですが、毎月の収支が赤字になってしまった場合は、家を買ったことを後悔するかもしれません。

さらに人生のタイミング的には、家を買った「後」に家以外の支出が上がってくることが多いです。子どもの習い事費用がかかったり、想定以上に学費がかかったり、成長に合わせて大きな車を買い替えたりするからです。

これらの支出が増えてきて家計がきつくなってしまった!
そんな場合でも、住宅ローンの金額は途中から下げることができません。

賃貸であれば住みかえることで住宅コストをコントロールができます。しかし持ち家は、はじめに決めた住宅固定コストに最後まで引っ張られてしまうことになります。

しかしこのデメリットについては、解消方法があります。

初めにしっかりと無理のない借入金額を調べ、その範囲で家を建てればいいというシンプルなものです。

デメリット3:維持コストがかかる

住宅を所有する。つまり当然ながら、その家はあなたの持ち物になるということ。そのため、メンテナンスコストや火災保険費用、固定資産税などがあなたの負担になります。
これらの支出はすべて持ち主が払うべきものです。そのため、賃貸の時は大家さんが負担してくれていました。

メンテナンス費用

メンテナンスコストはどんなものがあるでしょうか。初めのうちは、電球が切れたとか、ドアが思うように開かないとか細かいことしかありません。

最初に金額の大きい工事が必要になるタイミングは約10年後。電気機器の入れ替えかなと思います。

我が家の場合は築12年で、ガス給湯器と食洗器・ガスコンロも変えました。(45万円くらいかかりました。保証的には換気扇も変えるべきなのですが保留です)

外壁補修はあと数年以内にはやらなけば、という雰囲気です。(内容によりますが、おそらく150万円くらい)
さらにエアコンなどの高額家電も故障がたびたびあるので入れ替えが近いかもしれません。
上記のもの+αで合計240万円と考えて築20年目で外壁工事。そう換算するとちょうど月1万円となります。

つまり住宅ローン返済の他に、毎月1万円ほど積み立てする。
この位がストレスなくいろいろと修繕できる目安です。

この費用が始めに必要コストとしてイメージができていれば問題ありません。しかし、メンテナンス時期に貯金がないと困ってしまうことになります。

税金や保険の必要額

土地を買って平均的なサイズ感の家を建てた場合。
固定資産税はだいたい月1万円(※年約12万円を4分割で支払い)。
火災保険・地震保険の合計は年間コストでだいたい4~5万円。
これらを合わせると月当たりで15,000円くらいといったところでしょうか。

メンテナンスコストと税金+保険の合計が月25,000円。
住宅ローン支払いの他に、月々これくらい貯蓄する余裕が見れれば、維持コストに苦労することはありません。

但し住宅ローンの月々返済額が家計のギリギリのラインに設定していると、厳しいです。貯蓄まで手が回らず、このような維持コストの支払いがとにかく重く感じてしまいます。

デメリット4:資産価値の下落

人気エリアの土地や、建物は現在のところ価格が緩やかに上昇傾向にあります。

そのためすでにある不動産資産も極端に価値が下がってはいません。実際に10年前に土地を買った方は価値が上がっていきます。これは郊外の住宅地に住んでいる私でさえ同じこと。中央区などの人気エリアでは特にその傾向が強いです。

しかし、今までがそうだったように、今後も価値が上がり続けるか。これは誰にも分かりません。

新潟県も他県同様、年々人口が減っていっています。人口減少により需要(買う人)が減れば価値が下がりますよね。常識で考えれば需要(買う人)と供給(売る人)のバランスが崩れ、資産価値は下落する可能性が高いと言えます。

実は、この考え方は今から10年前にも同じことをみんな言っていました。しかし、現在必ずしもそうなっていません。
実際はどうかというと人気エリアは高騰、一般的な住宅地は横ばい、不人気立地が下落です。

ではこの先どうなるのか。
確実に言えるのは、今後は不動産価格の二極化がさらに加速すること。

繰り返しになりますが、最初に資産価値を重視するのか。それとも割り切って自分たちの暮らしを重視するのか。この点をしっかりと考えて、後悔のない選択をしっかりとする必要があるでしょう。

メリットとデメリットは表裏一体

結論を考えると、こうです。
居住地や住宅コストが固定されても良いなら持ち家は快適なのでアリ。
仕事の関係でまだ居住地を住宅コストを固定したくないのなら、所有のデメリットが多いのでまだナシ。

こんな考え方で良いのではないでしょうか。

時代の流れ的には、10年前よりも新潟で暮らしていきやすくなった。

いやもっと言うと、新潟で全然問題なくなったと私は思います。

オンライン打ち合わせもそうですし、毎日出社が必要ない方も増えています。以前よりかは企業も労働者側への配慮が格段に上がってきています。そういう意味では、居住地を固定するリスクは、以前よりは減っているのではないでしょうか。

全体を通して言えることは、所有の場合は賃貸よりも毎月の支払いが上がることがほとんど。

しかし、人生全体で見た場合は話が変わります。新潟の場合は土地がそこまで高くないので、所有のほうがトータルコストが低くなるケースが多いのです。

家族4人住める想定で、賃貸価格を見ると思った以上に高いですよね。

つまり収入がある現役時に無理なく住宅ローンを返していける範囲であれば、所有は悪くありません。
新潟に生活を固定する覚悟が決まった時点で、少しでも早く家を買った方が、お金の面だけで言えば有利です。

10年・20年後に売る可能性が高い。そのケースは別ですが、永住前提で家を買うなら、資産価値のことは気にしすぎないほうが良いです。

自分たちの身の丈にあって暮らしやすい、住みやすい家を建てることを考える。その方が人生の満足度は高まります。
『家づくりと、家を資産にしたい』とこの両立を考えると予算オーバーをする可能性が高くなります。すると、将来的に子どもに不動産は残せても生活が苦しくなります。

現時点の生活を無理なく過ごすこと。今この瞬間に子どもや大切な人へ時間とお金を使える環境を整えること。それを優先する方が良いかもしれません。

他の人と比較は絶対にせずに、あなたの価値観で家を持つメリットとデメリットをしっかりと考えてみてくださいね。

PS 返済リスクへは事前に対策が出来る

デメリット2と3で挙がっていた返済リスクについては、事前に資金計画をしっかり練れば回避できます。

事前の資金計画はマイホーム予算診断サービス(2回の面談で5,500円)で考えることができます。

家を建てる時にライフプランを無料で作ってくるところが多いのですが、有料の理由はこちらです。

昆 知宏
新潟住まいのお金相談室代表。新潟の住宅会社の営業マンとして働いた後、売り手の立場ではなく買い手の立場に立って住宅購入の相談ができる場所を作る為に独立した。

保険や住宅を売ることを目的にしない住宅購入専門のファイナンシャルプランナーとして、100%顧客サイドで顧客の理想とする家を安心・納得して買えるようにアドバイスを行う。そのスタイルが支持され、新潟県全域から年間100件以上の相談依頼を受けている。

関連記事