新潟の銀行間競争に大きな変化がありそうです。
SBIホールディングスは5月12日、新潟県地盤の大光銀行と資本業務提携すると正式発表した。ITに強みを持つSBIの技術力や金融サービスを提供する。SBIは全国の地方銀行と提携する「地銀連合構想」を進めている。出資する銀行は合計9行となる。
2022/5/13 日本経済新聞
第四銀行と北越銀行の合併から始まった大きな動き。
今度はここにきて、大光銀行とネット金融機関大手のSBIとの業務提携が発表されました。
2021年5月から資産運用分野で大光銀行とSBIは共同業務をしていました。今回は資本提携ということで、本格的にSBIグループの商品仲介に力を入れるのではないかと言われています。
これから家を建てようと思っている私たちの関心ごとはズバリ。「この提携により、ネット銀行水準の住宅ローンを気軽に使えるようになるか」です。
SBIグループは、住信SBIネット銀行から低金利の住宅ローンを販売しています。
もし大光銀行の各店舗にて住信SBIネット銀行の住宅ローンの取り扱いが可能となるとしたら。それは、新潟県の住宅ローンシェアを大きく揺るがす可能性があります。
SBIグループの住宅ローン取り扱いはどうなるか?
実際にローン商品がすぐ取り扱われるというと‥‥。
新聞やニュースを見る限り、企業向けの融資やコンサルティングで資本提携業務を始めていくニュアンスです。
したがって、すぐに個人向けの住宅ローンなどの商品提供を本格的に行うかはまだ分かりません。
大光銀行としては、
・今後もあくまでも自分の銀行からお金を貸し出して安定した利息収入を狙う
・SBIの代理として県内において商品優位性のあるSBIの住宅ローンを売って販売手数料を狙う
今後どちらになるのか、とても関心があります。
先にSBIと合併した地方銀行の状況は?
SBIグループは全国の地方銀行と提携するプロジェクトを進めています。これまでに島根県の島根銀行や福島県の福島銀行など8つの地方銀行と資本業務提携を結んでいました。
今後もう少し増やしていき、三菱UFJ、三井住友、みずほに次ぐ第4のメガバンクになるという構想があるようです。
そこで先行して資本提携済みである島根銀行や福島銀行。こちらがどのように住宅ローンを取り扱っているかを見てみましょう。
両方の銀行とも自行の住宅ローンとは別に住信SBIネット銀行の取り扱いも始めています。
ネット銀行の最大の弱点は来店相談がしにくいという点。これを銀行が窓口となって場所とマンパワーを提供することにより、解決しているように見えます。
現在の新潟でも、住信SBIネット銀行の住宅ローンは利用できなくもありません。しかし、対応できる金融機関側はマンパワー不足。積極的に利用可能な環境ではありませでした。
これらの問題を大光銀行が解決するとしたら。金利の安いローンは、住宅会社側からもこれから家を建てる側からもニーズがあります。申し込みが増える可能性が十分にあるでしょう。
住信SBIネット銀行の金利はどうか?
住信SBIネット銀行の金利
変動金利 0.390%
10年固定 0.92%
※2022年5月時点
変動金利はかなり安い水準。新潟県内の地方銀行と比較すれば、ぶっちぎりの安さです。
しかし10年固定はそうでもありません。ここ最近の固定金利上昇の影響ですね。2022年5月現在はSBIよりも、大光銀行の住宅ローンの方が安い状況です。(大光銀行は10年固定0.90%)
SBIにして魅力的な金利となるのは、当面は変動金利一択と思われます。
大光銀行を始めとした新潟の金融機関の変動金利相場は現在0.725%。変動金利で安い金利を探している人からすると、SBIの変動金利0.390%はとても魅力的に映るのではないでしょうか。
ただしSBIの住宅ローンは細かい但し書きのところに「審査状況によっては金利は0.1~0.3%上乗せとなることもあります。」との記載があります。
もし金利がプラス0.3%となってしまうと、地方銀行も分がありそうです。
なぜならネット銀行は諸費用が高くなりやすいから。金利が多少高くても、諸費用の安い(ネット銀行と比較して)大光銀行などの地方銀行の住宅ローンを組んだ方が、総合的には得になる可能性があります。
そのため、今後もし大光銀行がSBIの住宅ローンの取り扱いを始めたら
相談に行くとSBIと大光銀行の住宅ローンを併願で申し込む、というのがスタンダードとなるかもしれません。
「結果を見て、どちらか条件の良い方にしましょう」という具合です。
地方銀行とネット銀行の住宅ローンの大きな違い
金利が低いからネット銀行一択でいいんじゃない?
このように考える方が多いと思いますよね。実は新潟県ではネット銀行のシェアはそんなに多くはありません。
不思議ですよね。
それはなぜかというと、融資の仕組みによるところが大きいです。
地方銀行とネット銀行の最も大きな違いは、お金が出るタイミングです。
地方銀行は最初、ネット銀行は最後。
こんなふうに、捉えてください。
具体例を見ていきましょう。
土地を買うか注文住宅を建てる場合
土地を買って家を建てる場合。当然ながら土地は先にお金を払って買わなければなりませんよね。
もちろん土地も住宅ローンを使って購入することが可能です。
地方銀行であれば土地を購入するとき(最初)に住宅ローンを貸してくれます。
しかし、ネット銀行だとそうはいきません。
お金を貸してくれるのは家が完成したとき(最後)なのです。
そうなると土地を買う時に困ってしまいますよね。
そのため、住宅ローンとは別に立て替え払いのお金を使って土地をとりあえず買う必要があります。
これは土地を買わない方でも注文住宅を建てる方でもそうです。
注文住宅は着工時・中間時・完成時と3分割でお金を支払う。これが業界の一般的なルールだからです。
そのため、住宅ローンとは別に着工時と中間時に立て替え払いのお金を使って支払う必要があります。
現金が十分あるか、親など誰かが貸してくれれば問題なし。でも、こんなにも高額なお金は通常難しいはずです。
大きな違いはつなぎ融資の有無
そのため住宅ローンとは別に、立て替え金をとりあえず支払うためのローンを組む必要があります。
この立て替え払いをするために使う別なローンのことを、つなぎローン(つなぎ融資)と呼びます。
つなぎローンそのものにも合計数十万円の融資手数料、印紙代、利息がかかります。
そしてつなぎ融資の契約の段取りも誰かに仕切ってもらわないとなりません。
ネット銀行で自力で申し込んでつなぎ融資も自分で段取りをする。となると、それは結構大変で、実際かなり難しいです。
ネット銀行そのものでは、つなぎ融資の手続き面倒まで見てくれないことがほとんどです。そうすると、住宅会社の営業さんや金融機関の代理店のサポートを借りながら進めていく必要があります。
サポートする側の能力もいるし、建て主の費用も手間もかかります。注文住宅を建てる方は金利が安くても、総合的に見た時にネット銀行のメリットが出ないケースもある。結果、そんなに選ばれないという事情があったのです。
既に完成しているものを買う場合
一方で、建売住宅・中古住宅・マンションなど既にある物件を購入する場合。これはネット銀行で特段問題ありません。
なぜなら、何かに先行してお金を支払ったり分割してお金を支払う必要がないからです。
出てきた見積もりに対してそのお金を1回支払って終わりですから、手続きも簡単。
そのためネット銀行の住宅ローンがベストであればすんなり申し込みができます。
首都圏や大都市圏では土地を買って注文住宅を建てるというケースは稀。ネット銀行はそもそも申し込み母体の大きい都市部向けの商品と言えます。
金融機関から見ても手間がかかるので、地方の注文住宅購入者向けには作られていないとも考えられます。
費用と手間をカットできれば申し込み殺到?
見方を変えると、余計にかかる費用と手間をカットすることができればネット銀行は地方でも魅力的な商品です。
今私が注目しているのは、この手間を大光銀行が解決しちゃうかどうかです。
注文住宅を買う方がSBIネット銀行を使う場合、ネックになっているつなぎ融資(先行して土地を買ったりするために必要なローン)。これを大光銀行が自前で今後出してくれれば万事解決だからです。
もしその面倒でやっかいな部分を、大光銀行の担当者が各支店で手続き・サポートを一貫してやってくれるとしたら。私たち消費者としてはかなり助かります。
大光銀行としてもSBIの商品を取り扱う代理店収入に加えて、自社のお金を短期的に貸し出す利息(つなぎローン)収入も見込めます。ビジネスとしては十分に成り立つレベルだと思います。
ただSBIばかりやってしまうと、銀行が大事にしている自前の住宅ローンの貸し出しが減り、長期の利息収入(継続収入)が減ってしまいます。そこをどう考えるのかで、今後の方針が決まってくるでしょう。
ちょっと難しい話になってしまいましたので、まとめます。
1.今後大光銀行で金利の安い住信SBIネット銀行の住宅ローンを取り扱う可能性が出てきた
2.取り扱いをした場合、土地や注文住宅を建てる方の大きなハードルとなる”つなぎローン”までしっかりサポートをしてくれればかなり使い勝手が良さそう。
3.ただし現状で商品優位性があるのは変動金利のみ。固定金利派の人はあまり関係ないこと。
私たちにとって選択肢が増えることは良いことです。ぜひ気軽に住信SBIネット銀行が申し込める環境が整うと良いですね。
保険や住宅を売ることを目的にしない住宅購入専門のファイナンシャルプランナーとして、100%顧客サイドで顧客の理想とする家を安心・納得して買えるようにアドバイスを行う。そのスタイルが支持され、新潟県全域から年間100件以上の相談依頼を受けている。