「注文住宅を建てることができるのは、一部の限られた人だけになるかもしれない。」
木材価格が高騰したウッドショックが起こり始めた2年前、こんなことを業界の方と話していました。それがどうも、早くも現実になりつつあります。
家の価格が高騰しすぎて、注文住宅を建てることのハードルがかなり上がったのです。
例えば私の自宅。
無垢材に造作家具などのこだわりが詰まった完全注文住宅。ですが、約10年前には2,000万円ちょっとで建てられました。
これ、全く同じことを今しようとすると確実に3,000万円を超えます。
10年で、1.5倍。
衝撃の価格高騰です。
土地代をプラスすると
郊外なら、なんとか4,000万円以下。
交通アクセスの充実したエリアだと、4,500万円~5,000万円以上。
このくらいの価格帯になると、平均世帯年収700万円前後での返済はかなり苦しい。
なぜかというと、毎月の住宅ローン返済が10万円を余裕で大きく超えてしまうからです。
価格上昇をうけて、家を建てたい方には2つの選択肢が生まれることになります。
それは
❶ 土地価格を抑える
❷ 建物価格を抑える
このどちらかが必要になってきました。
土地を抑えるか、建物を抑えるか
この価格上昇下で大きくアドバンテージを持つ人は、土地を持っている人。
ここ最近で注文住宅をガッツリ建てる場合、親が持つ土地に家を建てる人がかなり多くなっている印象を受けます。
土地にお金をかけなければ、3,000万円ほど家に費用をかけても返済は現実的な額です。
今や注文住宅は総額3,000万円~ が相場になってきています。
土地を買って総額4,000万円以内にしたい。とすれば、新潟市でいうとけっこう郊外に出る必要があります。
しかしそれでも4,000万円近く。土地の価格も高騰しているからです。
住宅購入費が家計に占める割合は、この10年でとても大きくなりました。
立地は妥協できない。その状況で総額4,000万円以内を目指すなら、建物にかけられる予算は2,500万円くらいが上限。
2,500万円の予算だと、今はフル注文住宅はちょっと難しいです。
こんな悩みをみんなが抱えている現在、住宅会社各社は規格住宅に注力しています。
すべてコミコミで現在2,500万円前後。それが現在の規格住宅の攻防戦です。
土地は妥協できない! という方の受け皿となり、ここ数年急増&激戦となっているゾーンです。
とはいえ、「規格住宅」という言葉を聞きなれない方も多いでしょう。少し他との違いを解説していきますね。
規格住宅って何?
そもそも注文住宅と規格住宅は何が違うの?と思いませんか。
規格住宅とはざっくり言うと、要望に制限が何かしらかかる住宅です。
その制限が多ければ多いほど価格は安く、あなたの選択肢も狭まります。
選択肢とは、間取り、窓の位置、外観、内装といった大きなものから、壁紙やスイッチといった細かなものまで様々。
特に規格住宅の多くは形が決まっています。総2階建てが圧倒的に多いです。
総2階建てとは、1階と2階がほぼ同じ面積の家のこと。直方体のおうちです。
整形の四角い家は、新規分譲地に最近多く見られますよね。
規格住宅のメリット
とにかくコスパが良いです。
1階と2階が同じ面積になると、屋根や基礎が最低限で済みます。
整形なため耐震強度も取りやすい。形状もシンプルで、誰でも建てやすく工期も短縮できます。
高性能な家を低コストで建てやすいので、新築の多くが総2階建てになっているのが現在の状況。
しかし、もちろんデメリットもあります。
規格住宅のデメリット①1階が狭くなる
それは1階が狭くなりがちということです。
普通に要望を出していくと、多くの方が平屋に近いような要望をお持ちです。
1階に広いLDK。近い動線にパントリーもあって、お風呂もランドリースペースも予備室も..。玄関収納もほしいな、みたいな感じですね。
そのまま要望を実現すると、1階部分が大きくなって2階部分が小さくなります。
注文住宅なら1階部分が大きくなっても問題ありません。
ですが総2階建ての規格住宅だと、面積が足りなくなります。つまり要望の複数を2階に移動させる必要が出てくるわけです。
または、LDKや玄関収納をぐっと小さくする必要があるかもしれません。
住み心地を大きく左右する間取りの制限をどう考えるか。そこは各々の価値観によるところです。
規格住宅のデメリット②日当たりとプライバシー
規格住宅は土地にフィットしたプランにすることが難しいです。
建物の形は決まっているため、土地に当てはめるだけになるからです。
その土地にあった日照や風通しのために、ベストな設計を追求していくと結局注文住宅になります。
オリジナルな設計でゼロから図面を起こすと、コストアップになります。だからこそ、規格住宅は土地との相性が重要です。
例えばある程度広い土地であれば大雑把にプランしても、日当たりや風通しは大丈夫だと思います。
しかしながら、40坪前後の土地に家を建てる場合はきちんと考えければなりません。
立地住宅で建物に予算が回らなくて規格住宅を選択する場合
『敷地面積40坪前後+規格』という組み合わせは最もよくあるパターンになります。
この場合、敷地に建物は入るのは入るけど、無理やり感が出ていないかはしっかり確認してください。
日当たりが少ない家は後でストレスになります。
近隣のお宅との距離も取りづらいです。
窓の位置が丸かぶり、隣から丸見えリビングが丸見え…。など、プライバシーの確保ができていないと、それも大きなストレスになってしまいます。
規格住宅のデメリット③担当者の経験不足
そしてあまり大きな声でいえませんが、一番デメリットになるかもしれないこと。
それは、経験不足な方が担当者になる可能性が高まるということです。
絶対そうとはいいません。可能性のお話です。
なぜそうなりやすいかというと、規格住宅が安くできる理由のひとつは人件費の削減が大きいこともあるのです。
規格住宅は打ち合わせを簡素にできる。
そのため、新人さんや経験が浅い人を担当に配属させることが多いのです。
会社のエース的存在の経験が豊富な方は、話をまとめるのが難しい注文住宅を担当することが多くなります。
新人さんにも良い方はいると思いますが、人柄だけの問題ではありません。
「何か話が伝わらない、この人大丈夫かな?」と心配に思ったら、無理に話を進めないことが安全だと思います。
規格住宅の場合は担当者の見極めがとても大事になるのでぜひ覚えておいてください
注文住宅か規格住宅で建てるかは土地の価格次第
打ち合わせを重ねていくと
「結局規格住宅だと要望が入らない、注文にしよう」という人も多くなります。
なんとなくそれは納得ですよね。
家は1回しか建てられないから、妥協したくないものです。
住宅会社もとりあえず価格の安く値札の付けやすい規格住宅で集客し、できれば注文住宅を売りたい。経営上の狙いもあります。
予算に余裕があればそれでも構いません。ですが、夢が先行してどんどん予算超過してしまった場合は本当に注意をしてください。
月々の返済が10万円を超えてくると、かなり返済はきつくなる家庭がほとんどです。
そのため、ここに天下の宝刀であるボーナス返済を設定することが多くなります。
資金計画書上の住宅ローン返済額を、無理矢理月々10万円以下に設定。購入の心理的ハードルを下げようという商談が相次いで見られます。
しかしながら、いくらボーナス払いで月々返済額が下がっても年間返済額は変わりません。そこに惑わされないでください。
大事なのは、あなたの現実的な無理のない予算を初めに把握すること。
その上で、どのように予算を割り振っていくのか。
規格住宅が選択肢に上がる人は、これから大きく増えていくことが予想されます。
工夫して規格内で理想に近づけるのか。
注文住宅で完全に理想を叶えるのか。
曖昧のまま打ち合わせをしていても、スッキリしないと思います。
あなたの返済能力と、家に対する想い(いい家が欲しい、普通の家で良いなど)。
両方がしっかりとしていると、購入後も後悔しない選択をできるようになるでしょう。
PS
マイホーム予算診断サービスでは、土地建物にかけられる全体予算が分かるようになります。
土地と建物の予算配分についても明確になるため、住宅購入においてベストな選択肢をきっと選びやすくなりますよ。
保険や住宅を売ることを目的にしない住宅購入専門のファイナンシャルプランナーとして、100%顧客サイドで顧客の理想とする家を安心・納得して買えるようにアドバイスを行う。そのスタイルが支持され、新潟県全域から年間100件以上の相談依頼を受けている。